特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅲ.術前・術後管理における薬物療法の実際
12.脾摘術
冲永 功太
1
1帝京大学医学部第2外科
pp.104-105
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900956
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脾摘の適応となる疾患には,成人では胃全摘術に伴って施行される症例,血液疾患,門脈圧亢進症に対して施行される症例などが多い.また,小児では血腋疾患に対して施行される例が大部分である(表1).外傷による脾損傷に対しては,近年,脾摘後の易感染性が注目されるようになり,脾温存の手技が試みられ,脾摘症例は減少している.このように,脾摘術は多岐にわたる疾患に施行されるので,術前・術後の薬物療法は,脾摘の施行される原疾患によって異なってくる.
しかし,原疾患にかかわらず脾摘術自体に伴う問題点もある.まず,脾摘後の易感染性あるいは脾摘後重症感染症発生に関する問題がある1)(表2).脾の機能には,血球成分の破壊・濾過作用,免疫機能,食菌作用などが知られており,脾摘によってこれらの機能が失われるため,生体の感染に対する防御能や免疫能が影響を受ける.脾摘による感染防御能の低下は,程度の差はあれ生体を易感染性の状態にさせる.脾摘による影響は,脾摘を施行された原疾患と年齢によって異なる1).脾の関与する感染防御能の低下は通常,肝のKup-ffer細胞など他の網内系によって補われるが,原疾患が感染防御低下の状態にある疾患では影響を強く受ける.また,幼若児ほど重症感染が起こりやすいとされる.したがって,脾摘の施行される原疾患と患者の年齢によって異なる配慮が必要となる.
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