同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・4
頸部・気管傍領域—頸部こそが食道外科の原点
藤原 尚志
1
Hisashi FUJIWARA
1
1東京医科歯科大学 消化管外科学分野
pp.602-611
発行日 2023年5月20日
Published Date 2023/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214131
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Introduction
頸部こそが食道外科の原点であるとはいえ,胸腔鏡手術,さらにはロボット支援手術全盛の現在においては,直視下での頸部操作は明らかに手術の中心ではない.現在の胸腔鏡全盛の時代より以前には,胸部操作の負担(患者および術者双方の負担!?)を軽減するために,頸部および腹部(経裂孔)から可及的に切除操作をあらかじめ進めておく術式が行われており,頸部操作の重要性は実際に高かった.この頸腹先行の流れは現在の縦隔鏡(+経裂孔的腹腔鏡)手術へとつながっている.胸腔鏡や腹腔鏡と異なり,わかりやすい形で映像を残すことが少々難しく,技術の標準化が難しかったという点も,頸部操作が時代に取り残された原因かもしれない.
私自身は,解剖学的に一様である頸部〜上縦隔の頸胸境界領域を「(大動脈)弓上領域」と認識して,部分的な胸骨切開を厭わず頸部からの一括した手術操作でこの領域に限局した食道癌の切除・再建を行うことの合理性を強く感じており,実際に積極的に行っている.ときに切除するのが難しい頸胸境界領域の食道癌に適したアプローチであると確信している.もちろん現在は頸部操作が重視される時代ではないが,時代がまた一巡して日の目を見るときがきっと来るはずである.
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