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2018年診療報酬改定で,食道癌に対する非胸腔アプローチ根治手術として,縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術が保険適用され,さらに2020年改定では同手術でのロボット支援も認められた.すなわち,食道裂孔からと頸部からの術野展開で食道癌根治術を行えることとなった.肺癌術後や慢性閉塞性肺疾患(COPD)により胸腔アプローチ適応外となる症例に対しても,従来法では困難であった根治切除が行えることになり,今では根治術式として認知されるに至っている.後縦隔という狭小空間での術野確保が課題で,仰臥位であることもあり,気腹を用いても特に食道裂孔からの中縦隔(心囊背側)の視野展開が難しいことはしばしば経験されるところである.
われわれは,食道癌に対する非開胸・非胸腔アプローチを,片肺換気麻酔不要no one-lung ventilation esophagectomy with lymphadenectomy(NOVEL)として,2012年から行ってきた.当初は開腹創からda Vinci armを経裂孔的に挿入し,視野展開のため特注の柄の長い鉤を入れて心囊を圧排(挙上)し術野を確保した.心拍出量低下による血圧低下が術中しばしば発生し,そのつど手術を中断し,血圧の回復を待ったものである.15例目からは気腹下da Vinci armを挿入したが,やはり術野展開が課題であった.そんな状況で,atrial retractorがわれわれの術式における視野展開に有用なのではないかとのアドバイスをいただいた.確かに非常に有用であり,今日まで270例のロボット支援縦隔鏡食道悪性腫瘍手術を行ってきたが,不可欠の手術器具になっている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年5月末まで)。
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