同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・9
気管気管支角領域の各論—No. 106tbLはどこ?
藤原 尚志
1
Hisashi FUJIWARA
1
1東京医科歯科大学消化管外科学分野
pp.1380-1389
発行日 2023年11月20日
Published Date 2023/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214355
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Introduction
今回のテーマである気管気管支角領域は果たして上縦隔だろうか? 気管分岐部を境界とした胸部上部食道に対応した領域という観点ならば上縦隔に分類されるのが妥当だろう.また手術操作を考えれば,いわゆる左反回神経周囲に含めた一連の領域として扱われることが多い.ただし,いわゆる「臓器鞘」は,頸部から大動脈弓までとされており,そのような観点で考えれば気管気管支角領域は「臓器鞘」という頸部・上縦隔の大きな特徴を欠いた領域,と言える.同心円状の層構造の観点では,気管気管支角領域は大動脈弓上と弓下の移行領域であり,双方の特性を併せもった領域であると理解している.
同心円状モデルにおいては,Visceral layerが消化管に沿って頭頸部から骨盤まで一貫して,部位に応じて「胃間膜」「腸間膜」「直腸固有間膜」という形で連続的に存在していると考えており,よって本連載第6〜8回でも述べたように,大動脈弓下領域でもVisceral layerは確かに存在している.そのためVascular layerとの境界である間隙Spaceも,大動脈弓上領域から不明瞭となりながらも連続的に存在している.つまり,「大動脈弓より尾側に臓器鞘が存在するのか」という問いは,単に今述べた大動脈弓以下にも存在する間隙Spaceを「臓器鞘」と呼ぶかどうかというだけの問題である.
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