FOCUS
外科手術における腸内細菌叢の重要性—シンバイオティクスの術後感染性合併症抑制効果
横山 幸浩
1
Yukihiro YOKOYAMA
1
1名古屋大学腫瘍外科・外科周術期管理学寄附講座
pp.364-369
発行日 2023年3月20日
Published Date 2023/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214077
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はじめに
近年,腸内環境と様々な疾患の関連が報告されているが,外科手術における腸内環境の重要性については,いまだ十分に解明されているとは言い難い.腸内環境の指標として,患者から採取した糞便中の細菌叢プロファイルを評価することはよく行われる.特に近年は腸内細菌がもつ16SrRNAの遺伝子(16SrDNA)配列の違いで細菌を区別する分子生物学的手法がよく行われるようになった.なかでも新しい技術である次世代シーケンサーと高性能コンピュータの利用により,いわゆるメタゲノム解析が盛んに行われ,この手法を用いて糞便の細菌叢を解析して腸内環境の指標とする研究が数多くなされている.しかし,次世代シーケンサーで得られたデータは膨大すぎて,それをどのように解釈し,実際の臨床像と結びつければよいのかがわかりにくい.また,次世代シーケンサーを用いた解析は以前に比べ安価になったとはいえ,いまだ高額な検査法である.そのため,患者個々人の腸内環境の良し悪しを判断するためには,もう少し安価に行えるシンプルな指標を用いたほうが実臨床に即していると考えられる.
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