同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・3
筋膜論—同心円状モデルを普遍的な外科解剖とするための筋膜論
藤原 尚志
1
Hisashi FUJIWARA
1
1東京医科歯科大学 消化管外科学分野
pp.354-362
発行日 2023年3月20日
Published Date 2023/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214075
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Introduction
第3回は同心円状モデルが普遍性をもつうえでとても重要な筋膜構造に対する考察を進めたい.自分自身が「同心円状モデル」でいち早く解剖の概要をつかんだのが上縦隔であったが,自分自身はその後に上縦隔だけではなく,そのほかの領域まで同心円状モデルの応用範囲を広げながら,より普遍的な外科解剖の解明をめざすようになった.その過程で前提として考えざるをえなかったのが今回のテーマである「筋膜論」である.
現代の消化器外科手術・解剖の話題の中心は間違いなく「アワアワの層」「剝離可能層」「疎性結合組織層」であろう.これらは本来,まとめて「筋膜fascia」と呼称されるべきものである,というのが今回の筋膜論の根本である.このような筋膜論に対する反論の根拠となる誤解は,この「筋膜」と「腱膜・腱組織」との混同である.いわゆる筋肉を包むもっと硬い膜状組織,例えば腹直筋鞘・外腹斜筋腱膜や大腿・下腿に存在するそれに似た腱組織などは「筋膜fascia」ではない.この前提が重要である.
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