増刊号 術前画像の読み解きガイド—的確な術式選択と解剖把握のために
Ⅷ ヘルニア
閉鎖孔ヘルニア
佐々木 愼
1
,
永岡 栄
2
Shin SASAKI
1
1日本赤十字社医療センター大腸肛門外科
2日本赤十字社医療センター胃・食道外科
キーワード:
閉鎖孔ヘルニア
,
恥骨筋
,
外閉鎖筋
Keyword:
閉鎖孔ヘルニア
,
恥骨筋
,
外閉鎖筋
pp.338-341
発行日 2022年10月22日
Published Date 2022/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213930
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術前診断に必要な画像
骨盤までをしっかり含めた腹部CTあるいはMRIを施行する.図1に示すように,恥骨筋と外閉鎖筋に挟まれた空間に,脱出腸管を示す境界明瞭で類円形の腫瘤影が見られれば,比較的容易に閉鎖孔ヘルニアと診断することができる.矢状断や冠状断のCTも有用である.この際,画像所見で見逃しをなくすためには,やや逆説的な言い方であるが,高齢のやせ型女性に多く見られるなど本疾患の臨床的特徴も踏まえ,本疾患を鑑別診断として念頭に置いて所見を取りにいく,つまり恥骨筋と外閉鎖筋の間に図1のような典型的な所見が認められるか探しにいくことが肝要である.そして,おもに水平断における前後のスライスによって腸管の走行を慎重に辿り,脱出している腸管がどの部位であるか読影をする.さらに,この脱出腸管による腸管径の変化(キャリバーチェンジ)の有無を確認し,腸閉塞の状態を把握する.また,閉鎖孔ヘルニアは片側のみならず両側に存在する症例や鼠径部ヘルニア,特に大腿ヘルニアの併存が多いとの報告1,2)があり,CTやMRIでは腸管脱出を示す典型的な閉鎖孔ヘルニア画像だけに目を奪われずに,対側の閉鎖孔ヘルニアや併存鼠径部ヘルニアの存在についても読影をしなければならない.
一方,腸管が脱出していない閉鎖孔ヘルニアの画像による存在診断は難しく,CTにて恥骨筋と外閉鎖筋の間隙が10 mm以上に拡大し,さらに軟部組織陰影が認められた場合には閉鎖孔ヘルニアが疑わしいと報告している論文3)もあるが,最終的には術中所見に拠らざるを得ない.
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