- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
鼠径部ヘルニア手術において,メッシュを展開する層は,①Lichtenstein法に代表される横筋筋膜上(onlay),Kugel法やtransabdominal preperitoneal repair(TAPP),totally extra-peritoneal repair(TEP)に代表される横筋筋膜下(underlay),mesh-plug法に代表されるヘルニア門内(plug),および腹腔内(intraperitoneal onlay mesh:IPOM),に大別される(図1a).それぞれに優れたデバイスが製品化され,外科医の好み,あるいは病型を含めた患者側因子によって使い分けがなされている.本稿で紹介するONSTEP法は2013年に報告された1)比較的新しい術式で,①と②を組み合わせた術式である.そのコンセプトは,Lichtenstein法を行う側からからみれば,onlay法の簡便さをそのままに間接(外)鼠径ヘルニアと直接(内)鼠径ヘルニアを修復し,同時にフラットメッシュの内側部分をunderlay法に準じて腹膜前腔に展開することによってonlay法の最大の弱点である大腿ヘルニアも修復することにある.逆に,underlay法を行う側からすれば,underlayによる良好なメッシュの固定性を活かして大腿輪をカバーし,加えてメッシュの外側部分をonlayとして展開するため,underlay法において最も難しい内鼠径輪頭側での腹膜前腔剝離操作を回避できることにある(図1b).すなわち,ONSTEP法はLichtenstein法の亜型でありながら,すべての病型を治療できる簡便で効果的な術式である2,3).
一方,2018年に発表された鼠径部ヘルニアに関する国際ガイドライン4)では,様々な鼠径部切開法の中にあってLichtenstein法のみが推奨されている.上に述べたようにONSTEP法はLichtenstein法の亜型とみなされる5)ため,ガイドラインの推奨にも矛盾せず,今後,その有用性がさらに認知されるものと考える.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.