FOCUS
「転移性肝がん診療ガイドライン」の要点
佐野 圭二
1
Keiji SANO
1
1帝京大学医学部外科学講座
pp.471-473
発行日 2022年4月20日
Published Date 2022/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213689
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はじめに—転移性肝がん診療ガイドライン策定までの道のり
転移性肝癌の治療方針に関しては,肝臓への転移=全身転移,という解釈のもと,1960年代までは切除療法などの局所治療は非適応とされた.かといって当時有効な全身治療(ほとんどが化学療法)があるわけではなく,治験的な全身化学療法,あるいは緩和治療を行うのみであることがほとんどであった.1970年代に入って肝切除の手技が徐々に確立されてくるにつれて,条件の良さそうな症例から肝切除が行われるようになり,その成績が報告されるようになった1).そのなかで圧倒的に良好な切除成績がみられた大腸癌2),そして進行が遅く有症状であることが多い神経内分泌腫瘍(その時代にはカルチノイド,そしてその症状をカルチノイド症候群と呼称していた)3)が,切除対象となることがほとんどであった.
1990年代になると大腸癌・神経内分泌腫瘍以外からの肝転移のまとまった切除成績も,肝切除のhigh-volume centerから徐々に報告されてきた4,5).それらの結果は2000年以前の症例の集積であることや,また日本の日常診療とはかけ離れていることから,日本肝胆膵外科学会(以下,JSHBPS)のプロジェクト研究として,わが国で2001〜2010年に肝切除を行った1,539症例を集積し,解析を行った6).
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