増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル
Ⅳ章 術後合併症とその管理
A 重点術後合併症の管理ポイント
偽膜性腸炎
松田 圭二
1,2
,
大野 航平
1
,
岡田 有加
1
,
八木 貴博
1
,
塚本 充雄
1
,
福島 慶久
1
,
堀内 敦
1
,
山田 英樹
4
,
小澤 毅士
1,2
,
島田 竜
1,2
,
端山 軍
1,2
,
土屋 剛史
1,2
,
野澤 慶次郎
1,2
,
青柳 仁
2,3
,
磯野 朱里
2,3
,
阿部 浩一郎
2,3
,
小田島 慎也
2,3
,
山本 貴嗣
2,3
,
橋口 陽二郎
1,2
Keiji MATSUDA
1,2
1帝京大学医学部附属病院外科
2帝京大学医学部附属病院IBDセンター
3帝京大学医学部附属病院内科
4高島平中央総合病院外科
pp.256-258
発行日 2019年10月22日
Published Date 2019/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212709
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症状
抗菌薬による腸炎は偽膜性腸炎と抗菌薬起因性急性出血性大腸炎に大別される.当初,偽膜性腸炎の原因医薬品としてリンコマイシンやクリンダマイシンが注目されたが,現在ではほとんどすべての抗菌薬が原因医薬品となりうると考えられている.偽膜性腸炎はClostridioides difficile(以下CD)感染症である1).CDは芽胞を形成して長期間生息することができ,医療関連感染の原因菌である.機序は,抗菌薬投与により菌交代現象が起こり,多くの抗菌薬に耐性を有するCDが増殖し,CD産生性のtoxinが腸管粘膜を損傷して発症するとされている.本邦の最新の報告では,延べ入院患者日数10,000あたり7.4人にCD感染症の発生がみられたとしている2).偽膜性腸炎では,ブリストルスケール5以上の下痢が主症状であり,ほかに腹痛,発熱,血便,白血球増多,腸管穿孔,中毒性巨大結腸症,麻痺性イレウスなどをきたしうる.中毒性巨大結腸症や麻痺性イレウスが発症した場合は,下痢症状がみられないうえに重篤であり,緊急手術を要する場合もある.
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