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本書の書評を前田恵理子先生から依頼された際に,軽い気持ちでお受けしたのだが,初めて手にしたとき,その本の中身の濃さと重量感(408ページ!)がどっしりと伝わってきた.いつも多施設が集まる症例検討会では放射線科医としてキレッキレの読影をされる前田先生らが総力を挙げて翻訳された本である.本書は臨床での統合的アプローチ,胸部,腹部,骨盤部,背部,上肢と下肢,頭頸部の合計7つの章に分かれ,各章では解剖学,診察(身体所見),検査所見,画像所見,検査前確率を予測するスコアリング,特殊検査まで網羅しており他書に類をみない.各章では実際の症例が提示されどのように多角的に評価すべきかを,定義,疫学,原因,鑑別診断の基本事項に加え,症状,身体所見,検査所見まで含めて解説されている.
例えば強直性脊椎炎の症例では,典型的な靱帯骨棘形成での特殊検査として変形Schober試験(p 226)やHLA-B27の測定まで記載され,疾患を丸ごととらえようとする意気込みが感じられる本である.特筆すべきは,Clinical Pearlが随所にちりばめられており,その内容は患者のマネジメント,診断,検査結果の解釈にまで及ぶ.例えば,「大腸内視鏡検査は憩室炎の急性期には穿孔のリスクがあるため禁忌である.炎症性腸疾患や悪性腫瘍を除外するため,6週間が経過したあとに行うべきである」という短文で“ずばっと”迫ってくるものや,心囊液貯留患者の心タンポナーデ移行のリスク評価における奇脈の重要性,その所見の取り方の記載がある.一方,ユニークな切り口のパールも多々あり,例えば,消化管悪性腫瘍の身体診察において人名に由来する5つの医学的徴候が挙げられている(下記).
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