昨日の患者
同僚に看取られた師長さん
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.607
発行日 2019年5月20日
Published Date 2019/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212475
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死を迎える際には家族が付き添い,各家のしきたりに従って葬儀を行うのが常である.しかし身内がいない師長を職場の同僚が看取り,野辺送りをした事例を紹介する.
40年以上も前のことであるが,研修医時代の外科病棟師長Kさんは優秀で,厳しいながらも病棟の看護師から慕われていた.子宮癌となり3年ほど経って,全身の骨に転移をきたした.しかしながら鎮痛剤を飲み,天職である看護に邁進した.また当時は有効な癌化学療法は確立されてなく,再発患者には経口抗癌剤を気休めに処方するのが常であった.そしてわれわれ研修医は患者に「良い薬がありますから,飲んでみましょう」,家族には「進行が少しは遅くなるかもしれませんが,あまり期待できません」と語った.傍に同席するK師長も同じ抗癌剤を内服しており,心境を察するに余りがあった.
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