昨日の患者
心に秘めた話
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.887
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211684
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- 文献概要
死を目前にすると,誰にも語ることのなかった秘話を,誰かに話したくなるものである.10年ほど前のことであるが,死期を悟った患者さんが心の奥底に秘めたことを語ってくれた.
Tさんは末期の膵臓癌患者であった.ある大雪の晩に病室を訪ねると,窓辺に寄り添い,木々に雪が降り積もる様子をじっと見つめていた.そこで,「雪が降り続きますね.外は寒いでしょうね」と話しかけた.すると,「シベリアの冬はこんなものでないです」と,Tさんが語り始めた.
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