連載 ネパール&途上国・4
生活的独立と草の根に秘められた可能性
岩村 昇
1
Noboru IWAMURA
1
1神戸大学医学部医学研究国際交流センター
pp.315-317
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206297
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■ドルや円で買うことはできない
「草の根の人達を貧困と疾病の淵から浮き上がらせることができるか否かの鍵は,外部からの援助・協力にあるのではなく,草の根の人達が,貧困と疾病の淵から浮き上がれるんだ,と自覚できるか否かにかかっている.貧困とたたかう農業〜産業開発,疾病とたたかう健康づくり,そのようなたたかいに必要な能力が草の根の人達の中に備えられてあるのだということを信じて,その秘められた可能性を引き出すような教育,そして他者依存ではなく自立のための組織活動,こうした総合的なコミェニティ開発プロジェクトの目的は,貧しく病める人達が人間としての価値ある人生を送れるように,その可能性を創り出すことにある.こうしたプロジェクトの持つ尊厳と誇りとは,外国からのドルや円で買うことはできない.人は自らの努力によって,自分の人生の可能性を創造していかなくてはならないのである」.
インドネシアで,地域に根ざしたプライマリー・ヘルス・ケヤ(PHC)の普及に努力している私の友人であるインドネシア人医師から,昨日すなわち1981年1月28日に届いた手紙の一節である.私にはショックであった.彼はこの文章を,WHOの"Health by the People"(1976)の中から引用したのである.
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