--------------------
あとがき
遠藤 格
発行日 2017年6月20日
Published Date 2017/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211663
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
外科医の仕事には二面性がある.病巣を切除・再建することと術前・術後管理することである.手術はその名の通り「術」であることは明白であるが,周術期管理は「術」なのであろうか? 拡大切除や腹腔鏡下切除など,華々しい外科医としての醍醐味であるのは格闘技で言えば「立ち技」であろうか.それに比べて地味な印象のある周術期管理は「寝技」だと思ってきた.派手な立ち技も良いが,患者を助けるのは術後管理だと思っており,自分自身は寝技最強をめざして生きてきた.しかし,周到に準備し安全な手術を企画しても,術後合併症を起こし患者を失うことがある.これは何故なのかと自問自答してきた.
2011年から始動したNCDは多くのことを教えてくれた.若林剛らによる「National Clinical Database(消化器外科領域)Annual Report 2014」(日消外会誌48:1032-1044,2015)を見ると,2011年1月1日からの3年間に,消化器外科専門医115術式の実施総数は1,494,934例であった.術後30日死亡率は1.5%(0.4〜4.5%),手術関連死亡率は2.8%(0.9〜7.4%)であった.手術関連死亡の実数は42,048人であり,実に年間1万4千人が死亡している計算になる.交通事故の死亡者数が年間約7,000人であるから,その約2倍の患者が手術によって命を落としている.これは一体何に起因するのだろうか?「手術適応の誤り」「手術手技の未熟」「術後管理が不適切」だけで説明がつくのだろうか?
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.