昨日の患者
津波被災した高校生の恩返し
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.1223
発行日 2016年10月20日
Published Date 2016/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211319
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東日本大震災では巨大津波が三陸沿岸を襲い,多数の尊い人命をはじめとする甚大なる被害が生じた.そして大震災から早5年が経過したが,被災地の復旧・復興はいまだ遅々として進まない.
休日に仙台市内の献血ルームで検診医を勤めていると,女子高校生が初めての献血に訪れた.住所欄をみると,岩手県陸前高田市,しかも仮設住宅であった.高校生の献血者が少ないうえに,わざわざ遠隔地から献血に来てくれたことに大いなる興味を覚えた.そこで献血に来た理由を尋ねると,「東日本大震災では全国からたくさんの援助を受けましたので,ささやかながらも恩返しをしたいと常々考えていました.16歳となり献血できることを知り,献血ルームがある仙台に高速バスで来ました」と,答えた.さらに「仮設住宅が狭いため,息抜きも兼ねてですが」と,少し恥ずかしげであった.あまりにも健気な態度に,「直通の高速バスでも片道3時間半かかるのに,わざわざ遠方から献血に来ていただき,誠にありがとうございました」と,自然と感謝の言葉が出た.
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