1200字通信・94
進化と分化
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.1001
発行日 2016年8月20日
Published Date 2016/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211269
- 販売していません
- 文献概要
以前,外科医を目指す若い先生方に研修していただく内容の検討会に参加したことがありました.そのなかで,内視鏡についても指導すべきではないかとの提案があったのですが,これに対して「なぜ外科医が内視鏡の研修をしなければならないのか」という反論がありました.確かに外科学会の専門医制度では内視鏡検査は重要視されていません.しかし,特に消化器外科では術前診断や切除範囲の決定には内視鏡所見の読影能力が必要であり,さらに治療方法選択の多様化に対応するためにも内視鏡検査や処置ができるほうがよいということで,結局採用されることになりました.私も賛成でしたのでよかったのですが,奇妙な感覚が残りました.そして,その発言をした先生と私では,そもそも「外科医」の定義が違うのではないかと思い至りました.
私は消化器外科医を目指したこともあって,自ら望んで消化器疾患が中心の病院で研修をしてきました.そこでは,外科や内科の垣根を越えて何もかも自分でやらなければなりませんでしたし,消化器外科には内視鏡は必須と考え,上部はもちろん,卒業当時まだ一般には普及していなかった下部や胆道系の内視鏡検査,治療を勉強してきました.勿論,基本の外科医としての修練も積んだわけですが,あの発言をした先生は,手術は外科医が,また内視鏡は内科医が担当し,そうした役割分担をしなければ仕事ができないような大きな施設に長年勤務していることがわかったのでした.そして,その先生の経験した手術件数や手術手技のレベルの高さと併せて,その発言も宜なるかなと納得できたのでした.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.