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はじめに
採血は臨床検査に際して最も広く行われる基本的医療行為である.採血は一般的には安全であるが,ごく稀には重大な合併症を生じうるので,これをできる限り低減させることが必要となる.また,いわゆるpreanalytical errorを防ぎ正確な検査値を得るために,できるかぎり標準的な採血法を施行することが重要となる.採血法については,長年蓄積された経験と,いくつかの実験的なエビデンスにより,一定の手技が確立されてきた.しかしながら,最近までわが国には標準採血法についての指針がなく,多くの場合個人の経験もしくは個々の医療機関の指針などに基づいてこれらの問題が処理されてきたこともあり,採血法についてもいわゆる「ガラパゴス化」的な状況が一部では生じていたことも否定できない.例えば,2003年の臨床検査医学会で指摘された,採血管の未滅菌の問題はその一例であろう.このような状況を踏まえ,2004年7月,日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards,JCCLS)はいわゆる試案の形でわが国初の「標準採血法ガイドライン」を発行した1).その後一定の期間,各界の意見を募り,これらを検討・総合したものが,2006年11月に発行された「標準採血法ガイドライン」成案(GP4-A1)である2).本ガイドラインは,採血という極めて多人数・多職種の関与する手技に関するガイドラインであるため,医療現場への浸透については困難を伴うことも予想された.しかしながら,その後関連団体の地道な努力により,徐々にではあるが広く医療現場に浸透しつつある.
このように,わが国における採血法の標準化に一定の役割を果たしてきた標準採血法ガイドラインであるが,採血に関する新たなエビデンスが蓄積されたことや,米国の標準採血法ガイドラインも改訂されたことを受け,再度の改訂が必要となってきた.標準採血法検討委員会は,特にGP4-A1において議論が多かったいくつかの部分を中心として,改訂版の策定に向けた検討を行い,2011年1月に新たな改訂ガイドライン(GP4-A2)を発行した3).
本稿では,新しいガイドラインの主な内容と改訂点を中心に解説する.なお,本稿はあくまで改訂点の要旨の抜粋であり,正確な内容については必ずガイドライン本文をご参照いただきたい.
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