- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
サルコぺニアは加齢に伴う骨格筋減少症と定義され,急速に高齢化が進むなかで社会的に大きな話題となっている.日常生活における身体活動性の低下の原因となることはもちろん,外科手術においてもその重要性が認識されるようになっている.
「サルコぺニア」という言葉はRosenbergによる造語で,サルコ(筋肉)+ぺニア(減少症)を意味している1).元々,加齢に伴う骨格筋減少症と定義されていたが,ほかの様々な要因によっても起こってくることが知られている.栄養障害や運動不足による廃用性萎縮のみならず,肝疾患2),がんなどの進行や糖尿病にともなってもサルコぺニアは起こってくる.加齢に伴う筋肉減少症が原発性のサルコぺニアと定義されるのに対し,その他の種々の原因から起こるサルコぺニアは二次性のサルコぺニアとされている.実臨床の場では,様々な要因が複合してサルコぺニアは引き起こされているものと考えられる.
様々な疾患でサルコペニアが予後因子となることが報告されている.たとえば肝疾患においては慢性の肝疾患の進行とともに骨格筋減少が進行すると考えられており,肝硬変の予後因子となることが報告されている2).外科の領域では,転移性肝癌や肝細胞癌の切除後3)や下肢の慢性動脈閉塞性疾患に対する血行再建後の長期的な予後因子4),肝移植後短期の予後因子5,6)となることが明らかになっている.骨格筋量と関連の深い筋力が胃癌術後の合併症の予測因子となったという報告がある7).
さらに近年,サルコぺニアは骨格筋量のみならず,身体能力や筋力を加味した診断基準が国際的に提唱されており8),この定義はより臨床に則した定義となっている.本稿においては外科におけるサルコぺニアの意義を中心に述べる.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.