カラーグラフ Practice of Endoscopy
食道内視鏡シリーズ・Ⅺ
食道癌の内視鏡的レーザー治療
奥島 憲彦
1
,
井手 博子
2
,
鈴木 茂
2
,
羽生 富士夫
2
1琉球大学医学部第1外科
2東京女子医科大学消化器病センター
pp.1007-1009
発行日 1989年8月20日
Published Date 1989/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210414
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
早期の食道癌でも治療の第一選択は手術である.しかし,根治手術は開胸開腹に広範なリンパ節郭清を伴い,その手術侵襲は大きなものがある.そこで1983年以来,東京女子医大消化器病センターにおいて,レーザー治療の局所治療のみで根治が期待できる食道癌はどのようなものか,というテーマでレーザー治療を行ってきた.現在レーザーによる癌治療には,①高出力のNd-YAGレーザー光のエネルギーを利用して,熱凝固,蒸散により癌の破壊を行う方法と,②癌組織に高濃度に取り込まれた光感受性物質hematoporphyrin誘導体(HpD)を低出力のアルゴンダイレーザー光により励起して光化学反応をおこさせ,生じたsinglet oxygenにより癌を変性壊死に陥らせるphotodynamic therapy(PDT)の2つに大別される.進行食道癌による食道や気管の閉塞の解除には,PDTよりも高出力のNd-YAGレーザーの方が優れている.しかし早期の食道癌の治療には,低出力のため食道壁の穿孔の危険性がないことと,癌を選択的に治療できるという点からPDTを用いてきた.本稿では比較的早期の食道癌の根治を目的としたPDTについて述べる.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.