老医空談・8
臨床外科医の"恕"思
斉藤 淏
pp.546-547
発行日 1989年4月20日
Published Date 1989/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210341
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私は,年の暮になると,特定の漢字を選んで翌年の愛用に備えることにしている.一昨年は"敬"であった.昨年は"恕"を用いた.これはさる大会社の若いB社長が,高名作家のすすめによって決めてくれたのであった.
恕の字は論語にある有名な字である.論語(金谷 治訳注)によると,「子貢が孔子にたずねていった,ひとことだけで一生行っていけるということがありましょうか,と.子曰,其恕乎,己所不欲,勿施於人也.自分の望まないことは人にはしむけないことだ.」自分を思うのと同じように相手を思いやる,恕思の心である.自分に引き比べてみて他人を同情し寛大にゆるす,寛恕の心である.
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