随筆
佐谷有吉先生の思出
山本 弘
1
1大阪逓信病院
pp.248
発行日 1968年3月20日
Published Date 1968/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200374
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故佐谷有古先生は明治17年8月6日,丹後の舞鶴に生る。京都一中,六高を経て東大入学,明治44年同医科大学科卒業土肥慶蔵先生の下入局す。大正3年30才にして京都府立医専教授,同15年11月大阪医科大学(阪大医学部)教授,皮膚科泌尿器科教室を主宰す。以来医学部附属病院長,医学部長,附属医専部長等歴任,昭和21年3月定年退官す。ついで大阪国立病院長として多彩なる院長活動を続くること満11年有余に及ぶ。昭和32年初秋心筋梗塞の再度の発作に倒れて立たず,同9月23日未明満73才の生涯を閉ず。
以上のように先生の後半生は大阪に始まり大阪に終つた。その30年近い歳月,親しく謦咳に接した者には思出の種はつきず,又八方破れに構えた先生には数々の逸話が残されている。にもかかわらず今偲び草を綴らんとして,さてどこに焦点を絞つてよいか迷つてしまう。起伏のない大平原をゆつたり進んで行く巨人の姿,気づいて見れば地平線上遙かなる高みに立つていたという感じである。要するに先生は偉大なる平凡人であつた。
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