文献抄録
胎児肝補助移植—腹腔内モデルでの機能評価
広部 誠一
1
1慶大外科
pp.1790
発行日 1988年11月20日
Published Date 1988/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210221
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同所肝移植において大きな問題にdonorの供給不足があげられるが,特に小児において深刻である.その供給源として無脳児に注目し無脳児の肝移植への利用のために,本来の肝臓を残し胎児肝を異所移植するモデルを考案した.donorに胎生135〜140日の胎児羊を用い,recipientに5〜8週の子羊を用いた.胎児は子宮切開にて採取し,臍帯静脈にカニュレーションする.下大静脈を右房近くで切断し急速脱血させるとともに,臍帯静脈より乳酸リンゲル液を持続注入する.肝下部大静脈を腎静脈分岐部上部で切断.門脈,総胆管を結紮切断.肝動脈は大動脈まで剥離し大動脈を含めて切断し,そして肝臓を摘出し冷却する.recipient側は,本来の肝臓を温存し胎児肝移植する空間を作るために右腎を摘出する.また右腎動脈,下大静脈,門脈を露出し,総胆管はカニュレーションして外瘻化する.胆嚢は摘出する.胎児肝補助移植の方法は,まずdonorの肝部下大静脈とrecipientの肝下部大静脈との間に5〜7cm長の側々吻合を施行.肝動脈の吻合は,donorの肝動脈茎を有する大動脈部をrecipientの右腎動脈部へ端側吻合する.門脈系は,donorの臍帯静脈とrecipientの門脈を端側吻合する.donorの胆嚢にカテーテルを挿入し外瘻化する.host本来の肝機能を低下させるモデルとして,host本来の肝臓の総胆管を閉鎖させることも試みた.
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