Medical Scope
胎児時代の腹腔内嚢腫状陰影
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.961
発行日 1982年11月25日
Published Date 1982/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206129
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超音波断層法の普及とともに,大変に多くの胎児の疾患が診断されるようになりました。妊娠中の胎児の胸部,腹部をいろいろな角度で,また,いろいろな面で断層写真をとってみると,胸腔内,腹腔内にできた奇形や腫瘍の一部がよく写ってくることがわかってきたのです。皆さんもよくご存知のように,超音波断層のエコー像は水分のある部分をよく写し出しますので,卵巣のう腫のような水分のたまった袋状の腫瘍は大変によく診断できるのです。それで,胎児の腹腔内などによく超音波断層のエコー像で,まさに,卵巣のう腫のようなのう腫状パターン(cystic pattern)という画像がみられることがあります。大変に多くの症例がこのようにして胎児の腹腔内ののう腫様の腫瘍ではないかという疑いをもたれるようになったのですが,実は,このうち,本当にのう腫状の腫瘍が実際にあるのは割合少なく,胆のうや胃などがエコー像でそのようなのう腫状陰影として出現してくるようです。
まず,胎児の胃ですが,これは妊娠末期にはかなり多量の羊水をのみ込んでいますので,ちょうど胎児の躯幹の中央に大きな丸いエコー像として写し出されます。よくみていると少し胃は動くので,中の胃内容である羊水は外へ出されたりして内容が変化するのがわかりますが,ときには,この胃のエコー像を腹腔内の腫瘍だと間違えて診断してしまうこともありますので注意を要します。
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