特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
膵臓
膵頭神経叢切除
若林 利重
1
Toshishige WAKABAYASHI
1
1東京警察病院外科
pp.940-941
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210080
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膵頭神経叢第I部の切除術
まず,膵頭十二指腸の授動(Kocherの授動)を十分に行う.左腎静脈が下大静脈へ合流する部位を露出する必要があるので特に上方への剥離が肝心である.すなわち,Winslow孔の下壁をなす後腹膜を切離して下大静脈を上方まで剥離する.また内側に向かっては大動脈の前面を十分に剥離する.これによって左腎静脈が視野に入ってくる.膵頭後面に丈の高い扁平鉤をかけ,膵頭十二指腸を持ちあげながら,これを内側へ圧排し左腎静脈が下大静脈へ合流する位置を確認する.この合流部は意外に上方にある.膵頭神経叢第I部は左腎静脈が下大静脈へ合流する上角部の後方にある神経線維束である.したがってこの上角部を十分に露出することが大切である.
上角部の表面は薄い脂肪組織と線維組織が被い,しばしばこの中にリンパ節を混じている.この上角部の表面をKellyでつまみあげ,下大静脈の左壁と左腎静脈の上壁をガーゼ剥離子とKellyの先端で鈍的に剥離する.静脈壁を損傷しないように剥離は慎重に行う.Kellyで剥離するときには,その先端をわずかに開閉させながら少しずつこじあけてゆくようにする.小扁平鉤で下大静脈を右方へ,左腎静脈を下方へ圧排すると上角部が広くあらわれる.そこで上角部の腎静脈上壁に沿ってKellyの先端を突込み,まず後方へ,ついで上方へ向けて鈍的に剥離する.
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