特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
食道
遊離空腸移植による頸部食道再建
波利井 清紀
1
Kiyonori HARII
1
1東京大学医学部形成外科
pp.736-737
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210011
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下咽頭・頸部食道癌の定型的な手術は,咽喉頭食道摘出術であるが,この際に生じる頸部食道欠損の修復のひとつに,血管吻合術による遊離腸管移植がある.本法の歴史は古く,1959年Seidenbergらによりその可能性を示され,その後1960年代の半ばには本邦における中山ら,井口らの血管吻合器の開発により盛んに試みられている.しかし,裸眼や血管吻合器による血管吻合では,3mm前後の腸管栄養血管の吻合は不確実であり,一般化されるには至らなかった.一方,近年のマイクロサージャリーの発達は,細小(微小)血管の吻合を簡単かつ確実なものとし,形成外科領域では種々の組織移植が行われるようになった.遊離空腸移植は先人により試みられた遊離腸管移植を,マイクロサージャリーの手技を用いて劇的に復活させることに成功したもので,いまや頸部食道再建の代表的な手技のひとつになっている.
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