特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
食道
食道癌・頸胸境界部のリンパ節郭清の進め方
松原 敏樹
1
Toshiki MATSUBARA
1
1癌研究会付属病院外科
pp.711-713
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210002
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胸部食道癌の転移形態は一見複雑であるが,他の腸管と同様に転移好発リンパ節はその支配動脈や支配神経に沿った部位に分布しており,この部位がいわば食道の間膜構造を構成している.頸胸境界部ではこの間膜構造内には左右反回神経および下甲状腺動脈食道枝が走行しているが胸部食道癌(特にIu,Im癌)におけるこの部位の転移頻度は高率である.特に右側即ち右上縦隔最上部は転移の最頻発部位のひとつであり,また郭清効果も期待し得ることから確実な郭清が望まれる.頸胸境界部の郭清は鎖骨,胸骨,第1肋骨等が障害となり頸部や縦隔一側のみからでは郭清操作が不完全となり易い.頸部および縦隔側から正確な剥離層に到達し,両者を正しく連続させることが肝要である.そのためにはこの部の筋膜構造と脈管構造との解剖学的関係を把握しておくことが必要である.
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