特集 [施設別]悪性腫瘍治療方針のプロトコール
甲状腺癌治療のプロトコール—伊藤病院
尾崎 修武
1
,
伊藤 國彦
1
Osamu OZAKI
1
,
Kunihiko ITO
1
1伊藤病院
pp.947-952
発行日 1987年5月30日
Published Date 1987/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209733
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はじめに
甲状腺癌が他臓器に発生する癌とはかなり異なつた幾つかの生物学的特性を有していることは周知のことである.すなわち,まず第1に予後が病期よりも組織型(表1)1)によって著しく異なることである.例えば乳頭癌の10年生存率は一般日本人の期待生存率とほとんど変わらないが,未分化癌になるといかなる治療を行つても1年以上生存する症例は極めてまれである.第2に分化癌の予後は患者の年齢と性別に規定されることが多く,40歳未満の女性例の予後が良い反面,45歳以上の男性例の予後は悪いことである.その他にも,分化癌の自然経過は概して長いこと,転移巣にヨードを取り込むものがあること,multiple endocrine neoplasia(以下MEN)の髄様癌のように常染色体優性遺伝をするものがあること,などである.
したがつて,甲状腺癌の治療にあたつては、これらの生物学的特性を十分理解した上で治療計画を立てる必要があり,同じ甲状腺癌といつてもさまざまな治療法,手術術式がとられることになる.
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