Japanese
English
特集 癌外科の進歩—現状と将来
甲状腺癌
Carcinoma of the thyroid gland
藤本 吉秀
1
Yoshihide FUJIMOTO
1
1東京大学医学部第2外科教室
pp.1873-1876
発行日 1968年12月20日
Published Date 1968/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204746
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.甲状腺癌の特徴
日本で経験される甲状腺癌の90%までが比較的よく分化した組織形態を示す分化癌であり,これには一般の癌の概念であてはまらないような変った点がある.患者の手術時の年令をみると,20〜40歳の若い層のものが多い.しかも甲状腺腫瘤を始めて気づいた時,あるいは明らかに転移と思われるリンパ節の腫大や骨腫瘤に気づいた時を調べてみると,5年も10年も以前であるというものが少なくないので,甲状腺分化癌の好発する年令は10歳台から20歳台とみてよいように思う.
甲状腺分化癌の予後がよいことは今日一般に認められているところであり,癌としては非常に性質のおとなしいものとみてよい.それだけに放射線療法や抗癌剤療法が効を奏することはまずない.根治的に摘除するのが確実な唯一の治療法といつて過言ではないと思う.この種の癌の予後がよいだけに,手術に際しては細心の注意をはらい合併症を起こさないようにしなければならない.一般に癌の根治手術というと,少々術後に合併症が残つてもen blocに癌を含めまわりの組織を大きく摘除するのが常道であるが,それが甲状腺分化癌に関する限り適用されないことを第一に強調しておきたい.癌を根治的に摘除することと,あとに手術合併症を残さないこと,この一見相矛盾する2つの要素を個々の症例に応じて適切に判断し処理することが要求される.
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.