特集 [施設別]悪性腫瘍治療方針のプロトコール
肝臓癌治療のプロトコール—三重大学医学部第1外科
水本 龍二
1
,
野口 孝
1
Ryuji MIZUMOTO
1
,
Takashi NOGUCHI
1
1三重大学医学部第1外科
pp.837-849
発行日 1987年5月30日
Published Date 1987/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209718
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はじめに
US,CTを中心とする画像診断法の著しい進歩普及により原発性肝癌の発見される機会が増加しており,特に肝細胞癌では3cm以下の小肝癌が多数経験されるようになつてその予後が期待されている.また,肝内胆管癌もCA 19-9などの腫瘍マーカーの検索により発見される場合が少なくなく肝切除例も増加している.さらに嚢胞腺癌の報告例も増加しており,その特徴的な画像所見により症例が集積され,これをより詳細に分類することの必要性が論じられている.すなわち,これら原発性肝癌症例は近年著しく増加しており,本症の治療は極めて重要な課題となつている.
原発性肝癌,特に肝細胞癌では肝硬変症や慢性肝炎を高率に合併しており,また肝内胆管癌でも閉塞性黄疸を合併するものが少なくなく,治療成績の向上のためには肝機能を中心とした手術危険度の判定と形態面からみた腫瘍進展度とに基づいた治療法の選択が必要であり,これに従つて積極的な治療法,すなわち根治的な肝切除を行うように努力がはらわれなければならない.一方,診断時すでに高度に進展している症例も少なくなく,種々の集学的治療法が工夫されているが,肝癌に対する化学療法はいまだ確立されたものはなく,肝切除後の補助化学療法はほとんど施行されていないのが現状である.そこでここでは教室における原発性肝癌治療のプロトコールを紹介し,その成績や管理と対策などについても述べる.
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