特集 [施設別]悪性腫瘍治療方針のプロトコール
肝臓癌治療のプロトコール—兵庫医科大学第1外科
山中 若樹
1
,
岡本 英三
1
Naoki YAMANAKA
1
,
Eizo OKAMOTO
1
1兵庫医科大学第1外科
pp.830-836
発行日 1987年5月30日
Published Date 1987/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209717
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はじめに
1986年8月末時点における当科での肝細胞癌(HCC)外科治療後の長期生存例からみると,手術死亡,他病死などすべてを含めても肝切除患者の4人に1人は3年以上,6人に1人は5年以上生存する段階に到達している.一方,姑息的治療法であるはずの肝動脈結紮(HAL),あるいはそれに肝切除を併施した症例においても少なくとも10人に1人は3年以上生存を果たしている.このような成績に到達するまでの過程で最も重要であつたことはHCCに対する適材適所の治療の選択である.
消化器癌のなかで,HCCほど多彩な治療法の選択,あるいはその組み合わせ方の選択を強いられる疾患はない.それは,ひとつには高率に種々の程度の慢性肝疾患を合併するため消化管悪性腫瘍と異なり腫瘍進展範囲のみでは切除の範囲,可否を決定できぬ点,また,切除不能な場合においても肝動脈塞栓術(TAE)あるいはHALなどが予想外の延命効果をもたらす点2),などに起因する.
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