特集 症例による急性腹症の画像診断
吻合部縫合不全
真栄城 優夫
1
Masao MAESHIRO
1
1沖縄県立中部病院外科
pp.1210-1212
発行日 1985年9月20日
Published Date 1985/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209114
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症例
82歳,男性.入院の4ヵ月前から,それまで規則的だつた便通に変化がみられ,便秘気味となつた.悪心,嘔吐,腹痛,下血などはみられていない.2ヵ月前から,便秘と下痢を繰り返すようになり,外来を受診注腸造影の結果,直腸結腸移行部に狭窄を認め,バイオプシーで腺癌と診断され,入院.
型のごとき術前検査と準備の後,開腹術が行われた.病変は腹膜飜転部に存在し,根治的低位S字結腸直腸切除術が行われ,一期的に二層縫合による端々吻合が実施された.術中,肝硬変がみられたが,転移はない.術後も順調に経過し,直後の38度の発熱も3日目には完全に下熱,排ガス,排便もみられた.腹水貯留による腹部膨満があり,経口摂取は6日目から開始した.術後11日に至り,右下腹痛,悪寒,発熱38.8℃が出現,腹部は圧痛はあるが軟かく,腸雑音の減弱を認めた.腹部単純レントゲン写真では,麻痺性イレウスの像を呈していた(図1).絶飲食,輸液,抗生物質の投与が行われ,腹腔内膿瘍形成,吻合部縫合不全などを疑い,超音波エコーとCT検査が行われたが,腹水の存在以外には,異常所見は認められなかつた.これらの検査で,超音波では,腹水の所見にまどわされ,また腸管ガス像の存在のため,骨盤部の十分な観察がされて居らず,CTでも,十分低位の骨盤の撮影が行われていなかつたことは問題である.
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