特集 がん・画像診断の死角
肺
雨宮 隆太
1
,
於保 健吉
1
,
永井 完治
1
,
鍾 富明
1
,
高倉 英博
1
,
平良 修
1
,
早田 義博
1
,
山田 隆一
2
,
大多和 正樹
2
1東京医科大学外科
2関東逓信病院呼吸器科
pp.193-219
発行日 1985年6月20日
Published Date 1985/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209031
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はじめに
肺癌には種々の組織型があり,その各々が特徴的な増殖進展形態を示す(表1).組織型による相違は発生部位,気管支肺胞系の既存構造に対する侵襲態度のみならず転移様式にも相違がみられるので,これが診断法,治療法,予後の違いにもかかわつてくる.肺癌の組織型による増殖進展様式の差は胸部X線写真1),胸部CT,気管支鏡所見2)などの画像診断所見の差として表示される.一方,現時点では肺癌の術前の確定診断率は99%前後3)であり,確定診断の90%以上が気管支ファイバースコープ2)を用いての検査である.
肺癌は胸部X線写真や喀痰細胞診で異常を指摘され,気管支鏡的に採取した組織や細胞で確定診断される.肺癌を診療する外科医は内科系診断医と異なり,肺癌発見時より手術適応の有無と手術方法の選択を考慮して進展度に対する検査を同時に進めなければならない.肺癌の予後を左右する最大の因子は「組織型」と「治療時の病期」4)である.肺癌の手術にあたつてはこの2つの因子を常に考え,肺動脈と肺静脈を剥離して結紮切離可能であるか否かを検討することからはじまる.肺は実質臓器であり,切除後の肺の増生はありえないため,術前の手術方法(切除範囲)の検討が重要である.本文では術前の組織型診断,手術適応の有無と手術法の選択を中心に一般病院で行われている画像診断法の死角について症例を提示しながら述べることにする.
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