Japanese
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特集 がんの集学的治療をどうするか
肝臓癌
基調論文
Multidisciplinary treatment for primary liver cancer
山崎 晋
1
,
長谷川 博
1
,
幕内 雅敏
1
Susumu YAMASAKI
1
,
Hiroshi HASEGAWA
1
,
Masatoshi MAKUUCHI
1
1国立がんセンター病院外科
pp.173-178
発行日 1984年2月20日
Published Date 1984/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208550
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はじめに
原発性肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma,以下HCCと略す)は,わが国においては癌の死亡者数で男子の第3位を占めるほど,社会的需要は多いにもかかわらず,その治療成績は,はなはだ不満足である.その理由を思い付くままに挙げてみると,まずHCCは発見が容易でないことが挙げられる.近年肝硬変や肝炎はHCCの発生母地であるとの認識が普及し,これらの疾患のfollow up中に比較的小型のHCCが発見されることが珍しくなつてきたとはいえ,各地のセンター的レベルの施設で,しかも肝臓学の専門家によつてななされているのであつて,まだまだ全体をみると進行した段階で見付けられるHCCが多い.次にはHCCの主たる進展形式が,門脈を始めとする脈管への浸潤,すなわち血行性転移であるため,癌は容易に拡散した状態になり,肝切除を始めとする"局所療法"の適応を越えたものが多いこと.さらにわが国のHCCの大部分は肝硬変に合併しているという事実が挙げられる.
肝硬変自体が予後の悪い疾患であるし,短期的にみても外科侵襲に極めて弱く,この面からの治療上の制約もある.しかしながらこのような不利な条件が多いなかでHCC治療の努力が積み重ねられてきており,一昔前とは格段の相違がある.われわれ外科医の立場からは,10年まえは単に「肝切除をした」というだけで偉業であり,予後を云々して評価するような事はなかつた.
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