特集 癌のリンパ節郭清をどうするか
甲状腺
基調論文—甲状腺
牧内 正夫
1
1信州大学医学部第2外科
pp.725-731
発行日 1980年5月20日
Published Date 1980/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207442
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
甲状腺癌は表1に示す如く,濾胞上皮より発生する乳頭癌,濾胞癌,類表皮癌,未分化癌と,旁濾胞細胞(parafollicular cell,C cell)より発生する髄様癌に大別される.その頻度は乳頭癌が最も多く75.0〜87.6%を占め,次は濾胞癌で7.4〜17.5%である.未分化癌は2.7〜3.5%で決して多くはないが,極めて悪性である.類表皮癌は稀なタイプで,0.3〜0.7%を占める.髄様癌はカルチトニンを分泌する内分泌学的に特色のある癌で,1%前後にみられる.なお稀に肉腫などが発生する.
以上の甲状腺癌はそれぞれ特徴を持つており,例えば術後の生存率をみると,図1の如く乳頭癌と濾胞癌とは共に予後良好でほぼ同じような生存率曲線を示すが,未分化癌の予後はきわめて不良である.すなわち,乳頭癌あるいは濾胞癌などいわゆる分化癌と未分化癌とでは予後において著しい相違がある.髄様癌は組織学的には間質におけるアミロイド沈着を特徴とし,カルチトニンを分泌するApudomaの一つである.このように,甲状腺癌は組織型により生物学的性格を異にするので,各組織型に適した治療法を用いる必要がある.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.