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特集 鼠径・大腿ヘルニアの話題
成人鼠径ヘルニア
Bassini法における問題点
Inguinal hernia repair in the adult with special reference to Bassini's technique
中村 卓次
1
Takuji NAKAMURA
1
1群馬大学医学部第1外科
pp.1011-1014
発行日 1983年7月20日
Published Date 1983/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208378
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はじめに
鼠径部ヘルニアの手術に横筋筋膜が重要視されるようになったのは,Henry O. Marcy1)に負う所が大きい.彼は1871年に既に横筋筋膜による内鼠径輪の修復が解剖学上理論的であることを発表した.Bassiniが彼自身の手術方法を論文2)として発表する16年前である.Marcyが紹介した横筋筋膜についても,またBassiniの論文についても筆者は長い間,正確な知識を持たず,また積極的に勉強しようとさえしなかつた.成人鼠径ヘルニアの手術は昔,東大第1外科で先輩から教わつたBassini法が唯一無二の方法と考え,また長い間それで大過なくすごして来た.筆者が信じて疑わなかつた先輩から教わつたBassini法には問題があることが数年前にやつとわかつた.まことに恥しいことである.こうしたことが動機となり,第692回外科集談会(1979)で筆者が世話人をつとめた際,シンポジウム「高齢者ヘルニア」を企画した.その機会に外科集談会に加入している関東地区の大学や病院にアンケートをお願いし,94施設から5年間(1973〜1978)の鼠径部ヘルニア3,710症例について回答をいただいた3).そのうち外鼠径ヘルニア2,748例の75.9%はBassini法で手術されている.Bassiniの原著(1890)に忠実な方法であつたかどうかは,その際確めることはしなかつた.
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