Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
コレステロール系石における遺残結石
胆石症手術において,遺残結石を現在なお皆無になしえないというのは,外科医の1つの泣きどころである.20年ぐらい前までは,欧米の報告でも,胆石症手術後の遺残結石の頻度は大凡7〜8%といわれていたものである.最近では,DICをはじめとし,ERCPとかPTCによつて,術前に胆管の様子をかなりよく知りうるようになつた.また,疑わしい症例では,術中の胆管撮影や内圧測定,さらに胆道鏡などがルーチンに行なわれるので,遺残結石の頻度がかなり減少してきているのは事実であろう.Hessはラジオマノメトリーを導入して以来,遺残結石の頻度が8%から0.4%に減少したと述べている.比較的新しいGlennの報告(1974)では,胆石症全体では遺残結石の頻度は1.1%であるが,胆管切開を施した症例についてみると,4.3%あつた.Frank Glennは老年ではあるが,いまなおアメリカにおける胆石症手術の第一人者であるし,多数例をもとにしての彼の報告は,現在の標準的水準を示してくれていると思う.
ところで,わが国の報告例では,どれをみても遺残結石例のものすごく多いのに驚く.これは一にかかつて,ビリルビン石灰石例の多いことに因るものである.いま,試みに,東北大学第1外科の場合について,佐藤,松代の論文を参照してみよう.1961年から1976年までの胆石手術例数が1,187例で,そのうちビリルビン石灰石が244例となつている.また,脂肪酸石灰石は4例であつた.脂肪酸石灰石もビリルビン石灰石と成因的に同類とみると,それらの合計248例が,欧米ではあまりみられない胆石ということになる.これら248例中の遺残結石例は98例で39.5%とすこぶる高い.ここで,胆石症全体の1,187例から248例をひくと,コ系石が834例,純色素石が95例,その他10例で合計939例となる.その中での遺残結石はコ系石で7例,純色素石で2例の合計9例で,939例中9例,つまり遺残が0.96%にあつたということになる.また,胆管結石例だけについて遺残結石の頻度をみると,131例中7例で5.3%にあたる.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.