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はじめに
出血と血管撮影と言つても急性出血と慢性の出血とは全く趣を異にしている.後者においては,血管撮影の前に種々の検査を行ない,それでもその原因が不明のときにのみ血管撮影が適応になるのが普通である.しかるに,急性の場合は出血そのものを血管撮影上描出しなければならず,そのためには,撮影時に患者は十分に出血していなければならない.そのためには撮影は昼夜を問わず行なわれなければならず,患者の状態は重篤である場合が多く,緊急血管撮影の大部分はこれによつて占められると言つてよい.わが国の血管撮影は世界の先端を行くものであるが,この緊急血管撮影の実用という点では,欧米に比して遅れをとつていると言わざるを得ない.その原因として考えられることは,緊急血管撮影を行なうシステムが確立されていないところが多いことであろうと考えられる.即ち,緊急血管撮影には臨床家と放射線診断医との密接な協力の上で血管撮影の適応を決定し,夜中でもangiographer,看護婦および血管撮影に十分慣れたX線技師が30分以内に出頭できるような体制が必要であり,このような完全なシステムは,住宅事情,労働条件,放射線診断医の不足などの祉会的条件によつて不可能と思われる点が多い.
出血に血管撮影が極めて有用であることは1963年NusbaumおよびBaum1)が急性消化管出血を実験的に血管撮影上に描出して以来,急速に認識されるようになつたといつてよい.今回,出血の血管撮影全領域にわたつて網羅することは不可能であるので,消化管出血を中心に電要と思われるもののみについて言及するつもりである.外傷は出血と関係が深いが,本特集の他のセクションで述べられるし,頭頸部は専門分野が異なることから両者は省略することにする.
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