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特集 目でみる話題の消化器手術
難治性大量腹水に対する腹腔・大静脈(P-V)シャント
Peritoneo-Venous shunt for intractable massive ascites
樋上 駿
1,2
,
池永 達雄
1,2
Shun HINOUE
1,2
,
Tatsuo IKENAGA
1,2
1虎の門病院消化器外科
2冲中記念成人病研究所
pp.1513-1519
発行日 1977年12月20日
Published Date 1977/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206857
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この手術の意義と適応
薬剤投与などの内科的治療でコントロールできない大量の腹水貯溜は患者に大きな苦痛を与える.外科療法では,門脈圧亢進症に対する門脈大静脈吻合をはじめとするshunt手術,大網腹壁固定,Hepatopexyなどがあるが,poor risk患者には適さない.胸管drainage1)も持続的な腹水貯溜には適さない.
腹腔穿刺は比較的簡単で危険の少ない処置である.しかしそれが頻回になると,大量の蛋白質や電解質を失い,患者の消耗度は少なくない.よつて穿刺吸引した腹水を静脈に戻す方法2,3)があるが,長期にかつ頻回に行なうには困難を伴い,感染の機会なども多くなる.そこで持続的に腹水を腹腔内から腹腔外へ誘導する方法が種々試みられている.皮下4),腎盂5),静脈などへの誘導であり,それぞれ一長一短がある.ある種の器具を装着して腹腔と静脈にshuntを作成する方法は,poor riskの患者には,微小な侵襲で行なえるという点で,最も適した手術であり,1910年頃より試みられたが,血塊によるtubeの閉塞により成功しなかつた.しかし1962年Smith6)が肝硬変の1例に,水頭症患者の脳室drainageに用いるone-wayのHolter valveを装着して初めて成功した.この方法または変法が,Matthews7),Hyde8,9),Mortensonら10)により追試され,有効性が証明された.その後,高橋ら11)はglass fiberを,Leveenら12,13)は動物実験を基礎に独自に開発したvalveを使用して優秀な成績をおさめている.
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