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はじめに
肺癌治療における外科療法は,その適応,術前・術後の管理,手術方法等といつた肺切除に関する種々の問題点はほぼ解決され,安全性が確立されてきた.しかし肺癌の外科療法の治療成績をみると他の臓器癌に比べて最も悪い癌腫の一つであるといわざるを得ない.その治療成績が悪い大きな原因は,進行した肺癌が切除例の大半を占めていることにほかならない.最も治療成績を向上させる最大のポイントは早期癌を如何に多数発見するかといつた対策が必要となつてくる.肺癌の集団検診やhigh risk groupの検診,それらに併用して喀痰細胞診が再登場して再び見直されるといつた多くの試みもその一つの努力の現われに他ならない.一方5年生存あるいは癌の治癒が期待される治癒手術例でもその成績は決して良好であるとはいえず,また切除の対象となる症例の大半が進行した肺癌であるといつたことも放射線療法,化学療法といつた併用療法が治療成績を向上させる対策として取り上げられてきたのも当然といえよう.しかしこの場合肺癌では病期の進展を常に考慮に入れて,手術療法の適応は勿論,併用療法を企画しなければならない.胸腔内に進展が限局している場合には,手術によつて癌腫の完全摘除をはかることができる.症例によつて癌腫の遺残が予想され,あるいは手術によつても取り残しがあるものでは,術前・術中・術後の放射線療法の併用もその効果を症例によつては大いに期待することが可能である,しかし癌腫が胸腔外に進展し,特にリンパ節あるいは血行転移による遠隔転移巣に対しては現在の臨床検査やRI等のすぐれた利器を駆使しても早期発見は困難なことが多い.このような現実にたつて行なわなければならない肺癌治療であつてみれば,血行性転移を早期に惹起する特性をもつ肺癌の治療を考える場合,特に外科治療を行なう時点で,すでに血行性転移を起こしている症例に肺切除を行なつている確率は高いと考えなければならない.すなわち外科療法といつた局所療法と同時に,全く認識することができない血行転移に対する治療法もadjuvant therapyとして当然考えなければならない.しかし,手術に併用する治療法も手術の時点で終了することなく,肺癌の術後の長期にわたる血行性転移の発現を考えれば,術後に継続して長期にわたつて施行されることが必要である.それにはそれらの治療法に耐える全身状態はもちろん担癌宿主の癌腫に対する抵抗性を向上させるといつた問題も考慮して,きめ細かな治療法を考えていくべきであろう.
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