外科教育を考える【新連載】
外科卒後教育—あるレジデントの4年間の研修実績
鰐渕 康彦
1
,
尾本 良三
1
1三井記念病院外科
pp.1337-1341
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206605
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従来,わが国における外科卒後教育は大学病院を中心にして行なわれてきたために,いわゆる医局制度のなかで必然的に発生せざるを得なかつた多くの矛盾に対する厳しい批判が,一連の学園紛争の発火点となつたことは衆知の事実である.これに対して,市中にある一部の公立あるいは民間の病院では,早くから外科卒後教育,とくに臨床トレーニングの改善に関心を示し,主としてアメリカのレジデント制度にならつた種々のプログラムが試みられてきた.しかしながら,そのいずれもがわが国における保険診療体制という枠の中に閉じ込められていることと,何らかの形での大学病院の暗黙の支配から脱し切れずにいるために,トレーニングの実質的内容においてアメリカのそれとの間に格段の差があることは否めない事実であろう.われわれも,総ベット数400床足らずの民間病院ではあるが約5年前より理想的な外科卒後教育を求めて独自のプログラムを実施してきたが,本年に入り,やつとこのプログラムの中で育ち4年間のトレーニングを完結したレジデントが出るに到り,その実質的内容においても一応の成果を挙げ得たと思われる.ここに,1人のレジデントのサンプル・データを発表し,この方面に関心を持つ多くの人々の参考に供するとともに,わが国の現状においても,実のある卒後教育を実施することは決して不可能ではないことを示したい.
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