Japanese
English
特集 手術と肝障害
術後肝障害とその防止対策—肝不全について
Postoperative liver failure and its preventive measures
佐藤 寿雄
1
,
小山 研二
1
,
高木 靖
1
,
大和田 庸夫
1
Toshio SATO
1
1東北大学医学部第1外科
pp.165-173
発行日 1976年2月20日
Published Date 1976/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206437
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はじめに
肝臓は生体内では最大の実質臓器であり物質代謝の中心でもある.したがつて手術侵襲による多彩な生体内の変動は,さまざまな形で肝に影響をおよぼす.すなわち麻酔剤をはじめとした各種薬剤の投与,循環動態の変動,受傷による影響とその治癒過程にまつわる物質代謝の変動などが直接,間接に肝に負担を与える.その結果,肝機能に変調を生じさせることが考えられるが,肝機能が正常の時は多くの場合,肝はその幅広い対応能力により肝機能は異常を示さないか,一過性の障害にとどまる.しかし特に術前からすでに肝障害のある患者では,その負担が肝の代償能を上廻つた時には肝機能の失調をきたし,重篤な肝不全に陥ることが稀ではない.したがつて外科医は手術に際しては,患者の肝機能の状態を正確に把握しておく必要がある.しかし肝は予備能力が強力で,代償機能にすぐれているため,通常の肝機能検査では詳細な肝障害の程度や,予備能力を判定することは困難である.それ故手術時の肝不全の発生を予知することはきわめて困難であるが,一旦肝不全に陥つた場合にはきわめて重篤な状態となるので,術前術後の管理は慎重に行なうとともに,肝不全の対策には万全を期する必要がある.今回は教室の経験を基にして,まず手術後の肝障害の実態を述べ,さらにその防止対策についても触れてみたいと思う.
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