今月の主題 意識障害へのアプローチ
代謝性脳症
肝不全と意識障害
柳沢 徹
1
,
渡辺 礼次郎
1
1東京慈恵会医科大学・第1内科
pp.1872-1873
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220604
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肝性脳症
肝の機能不全は全身の代謝異常をひきおこし,多彩な臨床症状を呈するが,そのなかで肝性脳症は,意識障害を中心とする精神神経症状をしめすものである.一般に急性型(肝実質型)と,慢性型(副血行型)に大別される.前者は劇症肝炎によるものに代表され,急激かつ広範な肝実質崩壊に基づく急性肝不全症状の一つとして出現し,急速に昏睡に陥るきわめて予後不良のものである.後者は,Sherlockの提唱するportal-systemic encephalopathyに相当し,門脈-大循環系の短絡形成のため,本来門脈血流を介して解毒されるべき消化管内の有毒物質が大循環に移行し,脳症を惹起するもので,生命予後は急性型に比べ良好ではあるが,反復するという特徴をしめす.他方,臨床上最も遭遇する機会の多い非代償性肝硬変症にみられる脳症は,中間型,あるいは末期進行型と呼ばれ,副血行型が主体となるものから,肝実質障害とともに進行性の形を呈するもの,あるいは消化管出血などの誘因により急激な肝不全をきたし急性型に類似するものまでさまざまな型をしめす.
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