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特集 痔核と痔瘻の外科
痔瘻治療のポイント
難治性痔瘻
Complex anal fistula and its treatment
土屋 周二
1
shuji TSUCHIYA
1
1横浜市立大学医学部第2外科
pp.877-884
発行日 1974年7月20日
Published Date 1974/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206074
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はじめに
痔瘻に関する記載は太古からみられ,さまざまな治療法があげられてきた.そして,痔瘻とはなおりにくく,再発が多いものだという観念は,最近まで,素人はもちろん,医家の中にもかなり浸透していたようである.近年まで,痔瘻は結核性感染症によるものが大部分であると信じられていたのも,一部はその難治性から,誤つた解釈が行なわれた結果である.Herrmann-Defosses(1880)は肛門小窩や肛門腺について記載したが,これに関する多くの研究がつづいて行なわれ,今日では肛門管におけるこの構造が,痔瘻の発生病理の上でとくに意義深いと考えられている.周知のように,この部からの細菌感染がもとで,痔瘻が起こることが多いとされ,大部分の痔瘻はこのいわゆる原発巣(内口)の処理を中心とした方法で根治可能なことが明らかとなつた.
これまでは原発巣に気付かず,不完全外痔瘻と診断された簡単な痔瘻に,不完全な処置が施され,これに起因したいわゆる再発例も少なくなかつた.近年では,これに注意すれば,数多い痔瘻の大部分は決して難治ではないことがわかつた.しかし,今日でも,やはり難治の部類に属する痔瘻症例が少数ながら存在する,このようなもののなかには,1例毎に苦心を重ねなければ十分な治療効果のあげにくい症例が多いと思われる.以下,一般的にみたこれらの治療方針を中心に鄙見を述べてみたい.
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