Japanese
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臨床研究
胃癌における姑息手術の意義とその適応
Evaluation of palliative operation for incurable gastric cancer
坂本 啓介
1
,
豊島 範夫
2
Keisuke SAKAMOTO
1
1東京大学医学部第2外科
2東京大学医学部第2外科教室
pp.1203-1208
発行日 1973年9月20日
Published Date 1973/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205872
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はじめに
胃疾患の診断技術の急速な進歩によつて,早期胃癌が多数発見されるようになつてきたが,それでも,なお外科医の扱う胃癌の大半は進行胃癌であり,すでに治癒の見込みのない末期の癌も少なくない.教室の胃癌症例についてみても,第1図のように,1956〜1970年の15年間の入院胃癌患者1293例中,治癒切除を行ない得たものは,552例で,治癒切除率は入院胃癌例の42.7%,手術例の44.9%に過ぎない.最近の諸家の報告をみても,胃癌手術例に対する治癒切除率は,佐藤1)68%,井口2)38.2%,梶谷3)51.6%,槙4)53.9%,堺5)51.3%で,手術例の半数前後が切除不能か非治癒切除(姑息切除)に終つている.
これら進行胃癌に対する姑息手術は,主腫瘍のみを切除するいわゆる姑息切除(非治癒切除)と胃空腸吻合,胃および腸瘻造設などの非切除手術にわけられるが,これらの術式は,いずれも古くからあるもので,この一世紀足らずの間,ほとんど変つていない.そして,われわれは,実際に治癒切除不能の胃癌手術に際して,その患者に姑息切除を行なうべきか否か,あるいは,胃空腸吻合や胃瘻,腸瘻をおくべきか否か,その術式の選択,適応の決定に迷う場合が少なくない.従来は,外科医が自己の経験による"かん"によつて手術の場で術式を選ぶことが多かつた.
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