Japanese
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特集 肝癌の外科
肝移植の現況と将来
Hepatic allotransplantation
服部 孝雄
1
Takao HATTORI
1
1九州大学医学部第2外科
pp.379-385
発行日 1973年3月20日
Published Date 1973/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205768
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はじめに
宿主肝にはふれないで,同種肝を本来の肝のあるべき場所とは別のところに移植する,いわゆる異所性同種肝移植の実験が,Goodrich-Welch1)(1956)らによつて報告されてからややおくれて,Moore2)らは肝全別後の同所性肝移植をイヌで初めて行ない(1959),次いで,Starzl3)らによつてこの研究は著しく推進された.早くも1963年には,Starzl4)によつて同所性肝移植の臨床例が報告され,1964年にはMoore5),Demirleau6)らの同所性肝移植の臨床例も相次ぎ,肝移植臨床の幕あけは甚だ華やかなようにみえた.しかしながら腎移植に比べて,肝移植にはあまりにも大きな問題がありすぎるため,その後の発展は,必ずしも初めに期待されたようなものではなかつた.まず肝全剔に加えて,肝移植を行なうことは,腎移植の場合に比して比較にならぬ程大きな手術侵襲であり,移植を完遂するためには,移植肝の上部および下部の下大静脈の吻合,門脈の吻合,肝動脈の吻合と血管の吻合が4つある上に,胆道の再建もせねばならないという技術的な困難さがある.またallograftの供給源は屍体以外にあり得ないが,常温で肝の正常組織が阻血に堪えられる時間は15分程度という条件を考えた場合に,屍体肝の利用の困難さは,心移植のそれと比すべきものであろう.
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