特集 胎内治療
Overview
現況と将来
荒木 勤
1
,
鄭 光民
1
Tsutomu Araki
1
,
Kuang-Ming Cheng
1
1日本医科大学産婦人科学教室
pp.409-412
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207780
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胎児の出生前診断は,とくにこの十数年来めざましい進歩を遂げてきた。従来と違って,極く早期に妊娠を診断することができるようになってから,生命ある胎児を認める時期はより一層早目になってきた。胎児にも生命が存在する以上,その生命を脅かすものがあったなら,たとえ胎児であっても,治療を施すことに対し怠慢であってはならない。たとえその治療が母親の利益に反しても,生命をもっている以上,治療を受ける権利は常に賦与されている。いわゆる,the fetus as a patient1)の時代になっている。胎児治療が一層,積極的に要求される時代に突入してきた。
高性能超音波診断のレベルアップで,羊水穿刺,胎児鏡,絨毛生検などの検査法が簡単にしかも正確に操作できるようになった。最近では臍帯穿刺(cordocentesis)により臍帯血液の採取percutaneous umbilical blood sample (PUBS)やDoppler flow法により胎児の血液生化学的変動,血球数,血流量,心機能などの普及が胎内での確診率を高くしてきた。その日進月歩の胎内診断の進歩と共に胎児治療においても目ざましい進歩がうかがえる。
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