カラーグラフ 臨床病理シリーズ・13
胃疾患の肉眼診断
Ⅰ.早期胃癌の肉眼形態とその鑑別—5.ⅡaおよびⅠ型早期癌
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部
pp.320-321
発行日 1973年3月20日
Published Date 1973/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205761
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1.Ⅱa型早期癌
隆起性癌は60歳近くの高年者に多く,胃体中部,幽門部に生じ易い.Ⅱa型はその分布より単発型,散在型,集簇型に分けられるⅡa型の早期癌と鑑別を必要とするものに1)上皮性のポリープ(疣状胃炎,家族性ポリポージス,Gardner症候群等),2)異型上皮,3)化生腸の上皮の過形成,4)粘膜下腫瘍(副膵,平滑筋腫,好酸,肉芽腫,カルチノイド等),5)転移性癌(大腸癌,メラノーム球等).Ⅱa型は集簇型を除きその大部分は単発性で老人に多い点より診断は容易である.しかし,これを見逃がしたり放置しておくと1年位の間に急速に発育し肝転移をきたす例が経験されるので,多少でも粘膜の隆起をみたならば胃生検で確かめる必要がある.症例24は2.0cm以内のIIa型であるが粘膜下層の静脈内に浸潤し,手術時すでに肝に拇指頭大の転移をみた例である.
症例25はⅡa+Ⅱcのポリープ型とも分類されるが,Ⅱcの部がせまくⅡaの部がめだつときにはⅡa型に分類している.症例26は集簇型のⅡaで略図に示した範囲(8.0×8.0cm)はすべて癌である.癌巣は限局した領域を有し周辺の粘膜からアレヤの相違によつてその範囲は明瞭に識別される."1つの領域"を有している点がポリポージスや転移性の癌の鑑別点となる.
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