学会印象記 第1回 日本消化器外科学会を聞いて
特に胃の良性疾患について
広田 和俊
1
1千葉大学
pp.1505-1506
発行日 1968年9月20日
Published Date 1968/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204699
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近年,胃広範囲切除術の遠隔患者数の増加につれて,いわゆる胃切除術後症候群について論じられることが多くなつた.栄養障害に関しても,各種の報告に接する.すなわち,鉄欠乏性貧血や巨大赤芽球性貧血など貧血に関するもの,鉄,カルシウム,ビタミンA, D, B12,B1,B2,蛋白質,脂肪などの吸収障害,それに随伴する低蛋白血症,各種ビタミン欠乏症,骨軟化症,低必須アミノ酸血症,Creatorrhoea, Steatorrhoea等の症状,体重の減少,体力の減退,社会復帰の問題,ダンピングなどである.今回もこの面からの検討が多く提出されている.
まずダンピング症候群の解析では,セロトニン,ブラディキニン,カテコールアミン等の臨床測定や実験成績が呈出され(川上氏ら三重大,福井氏ら長大,田頭氏ら神大),いずれも説得力のあるものであつたが,これら物質の血中出現の機序,或いは相互因果関係などについては,今後の研究に俟たねばならない(林四郎教授).田頭氏らは,トラジロールの静注により,高張糖液経口投与時のキニン変動を抑制し,症状を軽減し得ている.手術術式によるダンピング発生の予防としては,友田式胃嚢形成術(原口氏ら都志見病院)や舌状吻合術B-I法B-II法(福原氏ら大脇病院)が報告されてた.ことに前者は,詳細な内視鏡的追求により食物貯留による粘膜変化の可能性を否定している.
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