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特集 木本誠二教授退官記念特集
腎移植
Renal transplantation
稲生 綱政
1
INÔ Tsunamasa
1
1東京大学医学部第2外科
pp.922-928
発行日 1968年6月10日
Published Date 1968/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204617
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はじめに
昭和38年夏,木本教授に呼ばれた私は,教授からMurrayらが腎同種移植の成功例をNew England Jour-nal of Medicineに報告していることを知らされた.今迄,臓器や組織の同種移植は,いわゆる移植免疫反応という厚い壁の前に全く不可能とさえ考えてられていた.もちろん,生命維持に不可欠な臓器が機能を廃絶したとき,これを他の個体からえて置換しようとする試みは過去に数多くの報告がある.しかし,Carrelらに始まる同種あるいは異種移植時の免疫反応の特異性は,Medawar,Dempsterらによつて確認され,その抑制は,生命維持を困難なものにすることから,結局は,移植を断念せざるをえないものと考えられつつあつた.たまたま,Hitchingが6MpさらにはAzathioprineの抗免疫効果がすぐれていることに着目し,これをMurrayが臨床的に応用して,腎の同種移植を成功させるにおよんで,臓器移植を治療手段に用いるようとする臨床医学へ一大革命をもたらしたものといえよう.われわれも臓器移植に対する興味は少なからず,すでに昭和33年に当教室におりて移植に関するConferenceを開催している(綜合医学16巻4号).当時はもちろん,実験成績もきわめて不満足なもので,その後しばらくは静かに,わびしく,やがてくる日を待ちながら細々と研究が続けられてきたに過ぎなかつた.そしてその日がやつてきた.
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